Einstein 1 Platform 探求:生成AI統合のための開発者ガイド

概要とビジネスシーン

Einstein 1 Platform は、Salesforce のデータ、AI、CRM、自動化を統合し、あらゆるビジネスプロセスに生成AI(Generative AI)を組み込むためのメタデータ駆動型プラットフォームです。このプラットフォームは、従来のEinstein AIの能力を拡張し、Data Cloud を基盤とした統合データ層と、セキュアなAI連携を実現する Einstein Trust Layer を中心に、開発者が強力な生成AIアプリケーションを構築するためのツールを提供します。

実際のビジネスシーン

Einstein 1 Platform は、顧客体験を劇的に向上させ、業務効率を最適化するための無限の可能性を秘めています。以下に具体的なビジネスシーンを挙げます。

シーンA:営業部門におけるリード管理の効率化
業界:テクノロジー企業
ビジネス課題:営業担当者は、大量のリードの中から有望な見込み客を特定し、パーソナライズされたアプローチを考案するのに多大な時間を費やしていました。
ソリューション:Einstein Copilot を活用し、Data Cloud に統合されたリードの行動履歴、Webサイト訪問履歴、CRMデータに基づいて、各リードに合わせたパーソナライズされた紹介メールやフォローアップの提案を自動生成します。さらに、商談フェーズの進捗を予測し、次に取るべきアクションをCopilotが推奨します。
定量的効果:リードの応答率が15%向上し、商談化までの時間が20%短縮され、営業担当者のリードあたりの作業時間が30%削減されました。

シーンB:サービス部門における顧客サポートの高度化
業界:消費財(Eコマース)
ビジネス課題:顧客からの問い合わせ(メール、チャット)内容の理解と、適切な回答の作成に時間がかかり、サポート担当者のトレーニングコストが高い状況でした。
ソリューション:Einstein Copilot が、受信した問い合わせの内容を即座に要約し、Data Cloud に蓄積された過去の解決事例や製品ドキュメント、CRMの顧客情報から最も関連性の高い解決策や回答案を生成します。担当者は生成された回答をレビュー・修正するだけで顧客に返信できます。
定量的効果:顧客満足度(CSAT)が10ポイント向上し、平均処理時間(AHT)が25%削減され、新規サポート担当者のオンボーディング期間が40%短縮されました。

シーンC:マーケティング部門におけるコンテンツ生成の高速化
業界:メディア・エンターテイメント
ビジネス課題:多様な顧客セグメントに合わせたキャンペーンコンテンツ(広告コピー、ソーシャルメディア投稿、ブログ記事の草案)を生成するのに、クリエイティブチームに大きな負担がかかっていました。
ソリューション:Prompt Builder を使用して、ブランドガイドラインやターゲット顧客の特性に基づいたカスタムプロンプトテンプレートを作成します。Einstein Copilot がこれらのプロンプトを活用し、各セグメントに最適化されたマーケティングコンテンツの初稿を自動生成します。マーケターは生成されたコンテンツを編集し、迅速に公開できます。
定量的効果:キャンペーンコンテンツの制作時間が50%短縮され、ABテストの実施回数が倍増、エンゲージメント率が平均8%向上しました。


技術原理とアーキテクチャ

Einstein 1 Platform は、Salesforce の既存の強力な機能を基盤として、AIとデータの融合を実現します。その核となるのは、データ、AI、CRM、自動化の連携です。

基礎的な動作メカニズム

Einstein 1 Platform の動作メカニズムは、以下の主要な層で構成されます。

  • Data Cloud(データクラウド):Salesforce内外のあらゆるデータをリアルタイムで統合し、単一の顧客プロファイル(Single Source of Truth)を構築します。これはAIモデルの学習データ源となり、またAIの推論結果を再活用する基盤となります。
  • Einstein Trust Layer(アインシュタイン・トラスト・レイヤー):生成AIの活用において最も懸念されるデータセキュリティ、プライバシー、ガバナンスを確保するための重要な層です。データのマスキング、セキュアなプロンプトルーティング、監査証跡機能を提供し、顧客データが外部のLLM(Large Language Model)に直接漏洩することなく、安全に利用されることを保証します。
  • Large Language Models (LLM)(大規模言語モデル):Salesforceが提供するFoundation Models、またはOpenAIやGoogleなどパートナーのLLM、さらにはカスタムモデルなど、複数のLLMと連携します。
  • Metadata Framework(メタデータフレームワーク):Salesforceの標準およびカスタムオブジェクト、フロー、Apex、UIなど、あらゆるCRMメタデータをAIモデルに連携させることで、AIがCRMの文脈を理解し、より関連性の高い結果を生成できるようにします。
  • Einstein Copilot(アインシュタイン・コパイロット):エンドユーザー向けの対話型AIアシスタントで、自然言語による指示に基づいて様々なビジネスアクション(Apex Actions, Flow Actions, Prompt Actionsなど)を実行します。
  • Prompt Builder(プロンプトビルダー):開発者やビジネスユーザーが再利用可能なプロンプトテンプレートを構築し、CRMデータやオブジェクトのコンテキストを動的に挿入して、LLMとの対話を最適化するためのツールです。

主要コンポーネントと依存関係

  • Data Cloud: 全てのEinstein 1 AI機能のデータ基盤。CRMデータ、外部データソース(DMP, ERP, Web analyticsなど)を統合。
  • Einstein Trust Layer: Data CloudとLLM間のセキュリティゲートウェイ。データマスキング、セキュアなAPIコール、監査。
  • Einstein Copilot & Copilot Builder: エンドユーザー向けUIと、開発者がCopilotのスキル(Skills)、アクション(Actions)、プロンプト(Prompts)を定義・テストするためのツール。
  • Prompt Builder: LLMに渡すプロンプトをテンプレート化し、Salesforceデータと連携させる。
  • Apex & Flow: Einstein Copilot Actions を定義するための主要な拡張メカニズム。カスタムロジックや外部システム連携をAIに組み込む。

データフロー(Einstein Copilotによるケース作成アクションの例)

ステップ コンポーネント アクション
1. ユーザー入力 Einstein Copilot UI ユーザーが自然言語で「新しいケースを作成して」と指示。
2. 意図の解釈 Einstein Copilot ユーザーの意図を解釈し、関連する「ケース作成」スキルとアクションを特定。
3. アクション実行 Einstein Copilot → Einstein Trust Layer → Apex Action 「ケース作成」Apex Actionに必要なパラメーター(件名、説明など)をユーザーに確認または既存データから取得。Einstein Trust Layerを介してApex Actionを呼び出し。
4. データ処理 Apex Action (Salesforce Org) 受け取ったパラメーターでCaseオブジェクトを作成・挿入。
5. 結果返却 Apex Action → Einstein Trust Layer → Einstein Copilot 作成されたケースのIDとステータスをCopilotに返却。
6. ユーザーへの表示 Einstein Copilot UI ユーザーに「ケースXXXが作成されました」と応答。

ソリューション比較と選定

Einstein 1 Platform は、SalesforceにおけるAI活用の未来を象徴するものですが、従来のAI機能やカスタム開発と比較して、その特性を理解することが重要です。

ソリューション 適用シーン パフォーマンス Governor Limits 複雑度
Einstein 1 Platform (Copilot/Prompt Builder) 生成AIを活用した対話型アシスタント、パーソナライズされたコンテンツ生成、業務プロセスの自動化。CRMデータと緊密に連携したAI。 LLM応答速度に依存するが、Salesforceデータとの連携は最適化されている。非同期処理が基本。 Apex Actions/Flow Actionsに通常のApex Governor Limitsが適用される。LLMとの連携はAPIコール制限に注意。 中程度。Prompt BuilderやCopilot Builderでの設定が主。Apex/Flowによる拡張も容易。
従来のEinstein AI (Prediction Builder/Discovery) 特定のビジネス結果(離反予測、商談成約予測など)の予測分析、データの傾向分析とインサイト発見。構造化データに基づく機械学習。 リアルタイムまたはバッチでの予測スコアリング。高速。 主にPrediction Builderのデータ量やモデル数、Discoveryのデータセットサイズに制限。 中程度。設定ベースでモデル構築が可能。カスタムモデルはコーディング不要。
カスタムApex + 外部LLM連携 (REST API) 非常にニッチなLLMモデルの活用、Salesforceに存在しない独自のAI機能、既存の外部AIサービスとの直接連携。 外部LLMのAPI応答速度に直接依存。ネットワークレイテンシの影響が大きい。 Apex Calloutの制限 (100コール/トランザクション、最大120秒)。同期処理でのUX劣化に注意。 高。API認証、エラーハンドリング、プロンプトエンジニアリング、セキュリティ対策など全てを自前で実装する必要がある。

einstein 1 platform を使用すべき場合

  • 生成AI(LLM)の能力をCRMプロセスに安全かつ効率的に組み込みたい場合。
    Einstein Trust Layerにより、データプライバシーとセキュリティが確保されます。
  • 自然言語インターフェース(Copilot)を通じて、ユーザーがセルフサービスで複雑なタスクを実行できるようにしたい場合。
    Salesforceのデータやアクションとシームレスに連携し、生産性を向上させます。
  • Salesforce上のデータ(CRMデータ、Data Cloud統合データ)を活用して、パーソナライズされたコンテンツ生成やレコメンデーションを行いたい場合。
    Prompt BuilderがSalesforceデータをプロンプトに動的に埋め込みます。
  • 迅速な開発と運用、そして将来的な拡張性を重視する場合。
    メタデータ駆動型アプローチにより、開発コストを抑えつつ、容易に機能を追加・変更できます。
  • 超低レイテンシでミリ秒単位のリアルタイム推論が常に必要な極めてニッチなAI用途。
    LLMの特性上、リアルタイム性には限界があります。
  • Salesforceエコシステム外で完結する、特定の専門AIモデルの統合。
    Salesforceとの連携が不要であれば、専用のAIプラットフォームが適している場合があります。

実装例

Salesforce 開発者にとって、Einstein 1 Platform の最も強力な拡張ポイントの一つは、Einstein Copilot Actions としてカスタム Apex クラスを定義することです。これにより、Salesforce 内の任意のビジネスロジックや外部システムとの連携を Copilot の能力として公開できます。

ここでは、顧客からの問い合わせに基づいて Salesforce に新しいケース(Case)を作成する Einstein Copilot の Apex Action の例を示します。このアクションは、Copilot がユーザーからケースの件名と説明を受け取り、それを基に自動的にケースを作成するために使用されます。

/**
 * @description Einstein Copilotが新しいケースを作成するためのApexアクション。
 *              ユーザーからの件名と説明を受け取り、Caseオブジェクトを作成します。
 */
public class CreateCaseCopilotAction {

    /**
     * @InvocableMethod アノテーションは、このメソッドがEinstein CopilotやFlowなどから呼び出し可能であることを示します。
     * label: Copilot Builderで表示されるアクション名。
     * description: アクションの目的を説明します。
     */
    @InvocableMethod(label='Create Customer Service Case' description='Creates a new customer service case based on user input.')
    public static List<Output> createCase(List<Input> requests) {
        List<Case> casesToInsert = new List<Case>(); // 挿入するケースのリスト
        List<Output> results = new List<Output>();   // 結果を格納するリスト

        // 各リクエストを処理します(@InvocableMethodはリストを引数に取ります)
        for (Input request : requests) {
            // 新しいCaseオブジェクトを作成
            Case newCase = new Case(
                Subject = request.subject,       // ユーザーから提供された件名
                Description = request.description, // ユーザーから提供された説明
                Origin = 'Copilot',              // 起源をCopilotに設定(例)
                Status = 'New'                   // 新規ケースのステータス
            );
            casesToInsert.add(newCase);
        }

        // 挿入するケースがある場合のみDML操作を実行
        if (!casesToInsert.isEmpty()) {
            try {
                insert casesToInsert; // ケースをデータベースに挿入
                for (Case c : casesToInsert) {
                    Output result = new Output();
                    result.caseId = c.Id;     // 作成されたケースのIDを結果に含める
                    result.status = 'Success'; // ステータスを成功に設定
                    results.add(result);
                }
            } catch (DmlException e) {
                // DMLエラーが発生した場合の処理
                System.debug('Error creating case: ' + e.getMessage());
                for (Input request : requests) { // 各リクエストに対してエラー結果を返す
                    Output errorResult = new Output();
                    errorResult.caseId = null;
                    errorResult.status = 'Failed - ' + e.getMessage();
                    results.add(errorResult);
                }
            }
        } else {
            // リクエストリストが空の場合の処理
            Output result = new Output();
            result.caseId = null;
            result.status = 'Failed - No requests to process';
            results.add(result);
        }
        return results; // 結果をCopilotに返却
    }

    /**
     * @description Copilotアクションの入力パラメータを定義する内部クラス。
     */
    public class Input {
        /**
         * @InvocableVariable アノテーションは、この変数がCopilot Builderで設定可能であることを示します。
         * label: Copilot Builderで表示されるパラメータ名。
         * description: パラメータの目的を説明します。
         * required: このパラメータが必須かどうか。
         */
        @InvocableVariable(label='Case Subject' description='Subject of the new customer service case.' required=true)
        public String subject;

        @InvocableVariable(label='Case Description' description='Detailed description of the customer issue.' required=true)
        public String description;

        // 必要に応じて、さらにAccount IdやContact Idなどの関連情報を追加できます
        // @InvocableVariable(label='Related Account ID' description='ID of the associated Account.')
        // public Id accountId;
    }

    /**
     * @description Copilotアクションの出力結果を定義する内部クラス。
     */
    public class Output {
        @InvocableVariable(label='Case ID' description='ID of the newly created case.')
        public Id caseId;

        @InvocableVariable(label='Creation Status' description='Status of the case creation operation (Success or Failure).')
        public String status;
    }
}

実装ロジックの解析

  1. クラス定義: `CreateCaseCopilotAction` クラスは、新しいケースを作成するためのビジネスロジックをカプセル化します。
  2. `@InvocableMethod` アノテーション: `createCase` メソッドにこのアノテーションを付与することで、このメソッドが Salesforce の Declarative Tool(Einstein Copilot Builder や Flow Builder など)から呼び出し可能になります。`label` と `description` は、Copilot Builder でこのアクションを識別しやすくするために使用されます。
  3. 入力と出力の定義: `Input` および `Output` 内部クラスは、それぞれアクションの入力パラメータと出力結果のデータ構造を定義します。これらのクラスのプロパティには `@InvocableVariable` アノテーションを付与し、`label`、`description`、`required` 属性を設定することで、Copilot Builder でのパラメータマッピングが容易になります。
  4. リスト引数と戻り値: `@InvocableMethod` でアノテーションされたメソッドは、必ず `List` を引数に取り、`List` を返します。これは、一括処理(Batch Processing)をサポートするためです。
  5. ケースの作成: `createCase` メソッド内で、受け取った `Input` リクエストから `Case` オブジェクトを構築し、DML操作(`insert`)でデータベースに保存します。
  6. エラーハンドリング: `try-catch` ブロックを使用して DML 操作中のエラーを捕捉し、適切なエラーメッセージとステータスを `Output` に含めて返します。これにより、Copilotはエラー情報をユーザーに伝えることができます。

このApex Actionを作成すると、Einstein Copilot Builderで新しいアクションとして利用可能になり、Copilotのスキルとして設定することで、ユーザーは自然言語でケース作成を指示できるようになります。


注意事項とベストプラクティス

Einstein 1 Platform を最大限に活用するためには、Salesforce開発における一般的なベストプラクティスに加え、AI連携特有の考慮事項を理解しておくことが重要です。

権限要件

Einstein 1 Platformの機能を利用するには、以下の権限セットまたはプロファイルが必要になります。

  • Einstein GPT User (または類似の統合AI権限セット): Einstein Copilotの利用、Trust Layerの経由、および基盤となるAI機能へのアクセスを許可します。
  • Prompt Builder User: Prompt Builderを介してプロンプトテンプレートを作成・管理するための権限。
  • Data Cloud Admin/User: Data Cloudへのアクセスと、そこからのデータ利用に関する権限。
  • カスタムApex Actions を実行するためのApexクラスの実行権限
  • Copilot ActionがDML操作(例:Caseの作成)を実行する場合、関連するオブジェクト(例:Caseオブジェクト)に対するCRUD権限

権限は最小限の原則(Principle of Least Privilege)に基づいて付与し、不要なアクセスは避けるべきです。

Governor Limits

Einstein Copilot Actions としてApexを使用する場合、以下のSalesforce Governor Limitsが適用されます(2025年時点の想定)。

  • 同期ApexのCPU時間:10,000ミリ秒 (10秒)
  • 非同期ApexのCPU時間:60,000ミリ秒 (60秒)
  • SOQLクエリ発行数:100回
  • DML操作数:150回
  • HTTPコールアウト数:100回
  • HTTPコールアウトの合計タイムアウト:120秒
  • ヒープサイズ:6MB(同期)、12MB(非同期)
  • 非同期Apexメソッド(@future, Queueable, Batch)の1日あたりの実行制限:250,000回(または組織内のライセンス数に基づく)

特にLLMとの連携では、外部APIコールアウトのタイムアウトや回数制限に注意が必要です。長いプロンプトや複雑な処理は、ヒープサイズやCPU時間を消費しやすい傾向があるため、非同期処理(`Queueable Apex`など)を活用して設計することが推奨されます。

エラー処理

LLM連携では予期せぬ応答やエラーが発生しやすいため、堅牢なエラー処理が不可欠です。

  • 一般的なエラーコードと解決策
    • LLMからの不適切な応答: プロンプトエンジニアリングを改善し、より明確な指示や制約を与える。Guardrail機能の活用。
    • APIタイムアウト: 呼び出し元で再試行ロジック(Retry Logic)を実装するか、非同期処理に切り替える。LLM側の性能向上を待つ。
    • Trust Layerエラー: データマスキング設定や権限設定を確認する。Salesforceサポートに問い合わせ。
    • Apex DMLエラー: `try-catch` ブロックでDML例外を捕捉し、ユーザーに分かりやすいエラーメッセージを返す。
  • ログの活用: `System.debug()` を適切に使用し、詳細なログを出力することで、問題発生時のデバッグを容易にします。特に外部サービス連携においては、リクエスト/レスポンスの内容をログに残すことが重要です(ただし、機密情報はマスキングする)。

パフォーマンス最適化

Einstein 1 Platformを活用する上で、以下のパフォーマンス最適化策を考慮してください。

  1. プロンプトエンジニアリングの最適化: LLMへのプロンプトは、具体的で簡潔に記述し、不必要な情報を削除することで、LLMの応答速度と精度を向上させます。また、Few-shot Learning(少数の例を示す)を効果的に活用します。
  2. 非同期処理の活用: LLMからの応答には時間がかかる場合があるため、Apex ActionsがLLMと直接連携する場合は、`Queueable Apex` や `@future` メソッドを使用して非同期で処理を実行し、同期トランザクションのGovernor Limitsへの影響を最小限に抑えます。Copilot Actions自体は同期的に実行されますが、内部で非同期処理をキックすることは可能です。
  3. データモデリングの最適化: Data Cloudへのデータ統合時、またSalesforceオブジェクト設計において、AIが利用しやすい形にデータを整理・標準化することで、プロンプトの記述が容易になり、AIの推論精度も向上します。不必要なフィールドは含めないようにします。
  4. キャッシュの利用: 頻繁にアクセスされるが更新頻度が低いデータについては、Platform Cache を利用して LLM への入力データを事前にキャッシュすることで、応答速度を向上させることができます。

よくある質問 FAQ

Q1:Einstein 1 Platformは既存のEinstein AI(Prediction Builder、Discoveryなど)を完全に置き換えるものですか?

A1:いいえ、完全に置き換えるものではありません。Einstein 1 Platformは、従来のEinstein AIの予測分析能力に加え、生成AIとデータ統合の能力を強化・統合するものです。従来のEinstein AIは引き続き特定の予測モデリングやデータインサイト抽出に有効であり、Einstein 1 Platformはその能力をさらに拡張し、生成AIによる新しいインタラクションや自動化を実現します。

Q2:Einstein Copilot Actionsで問題が発生した場合、どのようにデバッグすれば良いですか?

A2:Copilot Actionsのデバッグは、主にSalesforceのデバッグログとCopilot Builderのテスト機能を利用します。

  • Salesforce デバッグログ:Developer Consoleで対象ユーザーのデバッグログを有効にし、Apex Actionの実行中に発生するエラーやログメッセージを確認します。`System.debug()` を適切にコードに挿入することで、変数の値や処理の流れを追跡できます。
  • Copilot Builderのテスト機能:Copilot Builder内には、作成したアクションをテストできる機能があります。ここで入力パラメータを手動で指定し、アクションの実行結果やエラーメッセージをリアルタイムで確認できます。
  • Apex Replay Debugger:より詳細なデバッグが必要な場合は、Apex Replay Debuggerを使用してコードの実行をステップバイステップで追跡できます。

Q3:Einstein Copilotのパフォーマンスを監視するための主要な指標は何ですか?

A3:Einstein Copilotのパフォーマンス監視には、いくつかの重要な指標があります。

  • 応答時間(Response Time):ユーザーがCopilotに質問してから応答が返ってくるまでの平均時間。LLMのレイテンシ、Apex Actionsの実行時間、ネットワーク遅延などが影響します。
  • アクション成功率(Action Success Rate):Copilotが実行を試みたアクションのうち、正常に完了した割合。エラー発生率の低下はCopilotの信頼性向上に直結します。
  • 意図認識精度(Intent Recognition Accuracy):ユーザーの意図をCopilotが正確に理解し、適切なスキルやアクションにマッピングできた割合。
  • ユーザーエンゲージメント(User Engagement):Copilotの利用頻度や、ユーザーがCopilotの応答に対してフィードバック(例:👍/👎)をどれだけ与えているか。これはCopilotの有用性を示します。
  • Governor Limits消費状況:Apex ActionsがGovernor Limitsに抵触していないか、常に監視する必要があります。Salesforceの「制限の使用状況」レポートやカスタム監視ツールを活用します。


まとめと参考資料

Einstein 1 Platform は、Salesforce開発者にとって、生成AIの力をCRMアプリケーションに深く統合するための革新的な基盤を提供します。Data Cloudによるデータの統合、Einstein Trust Layerによるセキュリティの確保、そしてEinstein CopilotとPrompt Builderによる開発者フレンドリーな拡張メカニズムは、企業がAIを活用して顧客体験と業務効率を向上させるための強力な武器となります。開発者は、ApexやFlowを通じてCopilot Actionsを定義することで、Salesforceの標準機能を遥かに超えるカスタマイズ性と自動化を実現できます。Governor Limitsやセキュリティ要件に注意しながら、ベストプラクティスに則った開発を行うことで、Einstein 1 Platformの真の価値を引き出すことができるでしょう。

公式リソース

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