Salesforceのリードオブジェクトを使わないと決めた管理者としての後悔と、今ならどうするか

A. standard objects で実際にやらかした判断

リードオブジェクトを飛ばして直接商談登録したこと

私がまだSalesforceの管理者として駆け出しだった頃、とある中堅企業の導入プロジェクトに関わっていました。そこでの判断が、今でも自分のキャリアにおける大きな反省点として残っています。それは、「リードオブジェクトは使わない」という設計判断でした。

当時の判断と背景

当時の私は、顧客からの問い合わせや名刺交換で得た情報は、ほぼ100%が商談につながる、という営業チームの言葉を鵜呑みにしていました。つまり、リードの「見込み客育成」というプロセスがほとんど存在しない、という認識だったのです。プロジェクトの初期要件ヒアリングで、営業責任者が「リードなんて面倒くさいだけだ。すぐに商談登録したい」と強く主張したこともあり、私は深く考えずにその方針を受け入れてしまいました。

私の役割はSalesforceの管理者として、主に設定とデータ移行、そしてユーザーサポートでした。Salesforce導入の目的は、受注までのパイプラインを可視化することと、顧客情報を一元管理すること。そのため、新規顧客情報は直接「取引先」「取引先責任者」「商談」として登録し、すぐに商談フェーズに入ってしまうフローを構築しました。

具体的には、以下のような設定をしました。

  • リードオブジェクトのタブを非表示に設定。
  • リードの入力画面への導線を全て削除。
  • 外部システムからの連携も、直接取引先・取引先責任者・商談にマッピング。

当時は「これで営業さんの手間も省けるし、スピーディに商談に繋がるパイプラインが見える!」と、むしろ良い設計をしたとさえ思っていました。

その結果、何が起きたか

1. リードソースのブラックボックス化

最大の失敗は、どこから顧客が来たのか、つまり「リードソース」が全く追えなくなったことです。展示会、Webフォーム、紹介、テレアポ…様々なチャネルからの流入があるにもかかわらず、全てが「新規商談」として一括りにされてしまいました。結果として、どのマーケティング活動がどれだけの商談に貢献しているのか、ROIを計測する術がなくなりました。カスタム項目で「リードソース(商談用)」のようなものを作り、手入力で運用しようと試みましたが、入力忘れやブレが多く、データ品質は散々でした。

2. 無駄なデータ入力と重複

「見込み客」と「既存顧客」の境界が曖昧になりました。例えば、以前問い合わせはあったものの商談に至らなかった企業が、数ヶ月後に別の担当者から再度問い合わせをしてきた場合、既存の取引先レコードがあることに気づかず、新しい取引先・取引先責任者を作成してしまうケースが頻発しました。Salesforceの重複ルールも、リードの段階で検知する仕組みがないため、既存の取引先や取引先責任者に対する重複ルールだけでは不十分でした。営業は「入力の手間が増えた」と不満を漏らし、私は管理者として「データが汚れる」という板挟みになりました。

3. 営業活動の効率低下

リードの管理と育成プロセスがスキップされたことで、まだ購買意欲が低い段階の見込み客に対するフォローが疎かになりました。営業は「商談」として登録されたものにしか目を向けず、結果として見込み客の「温める」期間が短縮され、失注率が高まるという負のスパイラルに陥りました。本来リードオブジェクトで管理すべき「リードステータス」や「ナーチャリング活動」が失われ、効果的な営業プロセスを構築できませんでした。

さらに、見込み客の評価(リードスコアリング)も当然できません。ホットなリードとコールドなリードが同じ「商談」として扱われるため、営業は優先順位付けに苦労していました。

今なら別の選択をする

当時の私は、営業の手間を減らすことと、パイプラインを早く見せることに意識が向きすぎていました。しかし、リードオブジェクトを飛ばすことは、結果として長期的な視点での営業・マーケティング効率とデータ品質を著しく低下させることになりました。

今なら、たとえ営業が「リードは要らない」と言っても、管理者としてリードオブジェクトを積極的に活用することを提案します。

  • インバウンドの受け皿として必須: Webフォームや展示会からの情報は、まずリードオブジェクトで受け止める。
  • リードステータスによるプロセスの可視化: リードステータスをシンプルに定義し、見込み客の現在の状況と次にとるべきアクションを明確にする。
  • 重複ルールの活用: リード段階で重複を検知し、営業が既存の取引先・取引先責任者に紐づけるか、新規として扱うか判断できる仕組みを構築する。
  • リードソース分析: どのチャネルがどれだけ有効なリードを生み出しているのか、レポートで明確に可視化する。
  • リードキューと割り当てルール: 獲得したリードを適切かつ迅速に担当者に割り当てる自動化を導入する。

営業がすぐに商談にしたいような「ホットリード」については、リードステータスを「ホット」とし、特定の基準を満たせば即座に取引先・取引先責任者・商談に変換する自動化(例えばフロー)を検討するでしょう。しかし、それでもリードオブジェクトを経由させることで、その「ホットリード」がどこから来たのか、どういう経緯でホットになったのかという履歴が残ります。

あの時、もう少し深くオブジェクトの役割と、それがビジネスプロセス全体に与える影響を考えるべきでした。Salesforceの標準オブジェクトは、それぞれが持つ意味と役割が非常に重要であることを痛感した経験です。


これは当時の自分向けのメモだ。

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